本記事は情報提供を目的としており、特定の医薬品・サービスの利用を推奨するものではありません。個人輸入は自己責任となります。健康上の不安がある方は必ず医師・薬剤師にご相談ください。
薬の個人輸入に数量制限はあるのか
「何錠まで注文していいの?」「どのくらいの量だと税関で止められるの?」——個人輸入を検討する際、多くの方が最初にぶつかる疑問です。
結論からいえば、薬機法(医薬品医療機器等法)と厚生労働省の定めにより、個人使用目的の医薬品輸入には明確な数量上限が設けられています。
この上限を超えると、税関で没収・廃棄される場合があり、代金の返金は原則として受けられません。
また、数量制限は薬の「種類」によって異なります。処方薬・毒薬・劇薬と一般薬では上限が異なり、医療機器・化粧品にもそれぞれ独自の基準があります。
種類を間違えると思わぬトラブルにつながるため、正確な知識が必要です。
厚生労働省が定める数量制限の基準一覧
以下は、輸入確認証なしで通関できる数量の目安として厚生労働省が示している基準です。
- 外用剤(毒薬・劇薬・処方箋薬・口腔用錠剤・坐薬を除く)
1品目につき標準サイズ24個以内 - 毒薬・劇薬・処方箋医薬品
用法・用量から換算した1ヶ月分以内 - その他の医薬品・医薬部外品(上記以外)
用法・用量から換算した2ヶ月分以内 - 化粧品
1品目につき標準サイズ24個以内 - 家庭用医療機器(マッサージ器・低周波治療器等)
1製品につき1セット - 使い捨てコンタクトレンズ
2ヶ月分以内(例:30ペア) - 体外診断用医薬品(排卵検査薬等)
2ヶ月分以内(例:60個) - 再生医療等製品
用法・用量から換算した1ヶ月分以内
この基準は「輸入確認証なしで通関できる目安」であり、これを超える数量を輸入する場合は地方厚生局への申請と輸入確認証の取得が必要です。
参照:税関「カスタムスアンサーNo.1806(医薬品の個人輸入)」
種類別・数量制限の具体的な計算方法
抽象的な「2ヶ月分」という表現が実際にどのくらいの量を指すのか、具体的に計算してみましょう。
- 【例1】内服薬・一般医薬品(1日3回・1回2錠)
2錠 × 3回 × 30日 × 2ヶ月 = 360錠が上限 - 【例2】処方薬・毒薬・劇薬(1日1回・1回1錠)
1錠 × 1回 × 30日 × 1ヶ月 = 30錠が上限
※処方薬は一般薬の半分の1ヶ月分が上限のため、注文数には特に注意が必要です。 - 【例3】使い捨てコンタクトレンズ(デイリー)
1日1ペア × 30日 × 2ヶ月 = 60枚(30ペア)が上限 - 【例4】排卵検査薬(体外診断用医薬品)
2ヶ月分 = 60個が目安 - 【例5】化粧品(口紅など)
1品目につき24個まで。ただし、ブランドや色が異なれば別品目として扱われる場合があります。
数量上限を超えた場合
数量制限を超えた医薬品が税関で発見された場合、以下のような流れで対応されます。
- 没収・廃棄
超過分は税関で没収・廃棄される可能性があります。超過の程度によっては全量没収になるケースもあります。 - 代金の返金なし
「税関で止まった場合は補償する」と説明している代行業者もありますが、実際には返金されないケースが多数です。補償の保証はないものとして考えるのが現実的です。 - 地方厚生局への申請が必要になる場合
継続治療など正当な理由がある場合は、地方厚生局への申請・輸入確認証の取得によって対応できる場合があります。
複数回に分けて輸入することはできるか
「一度では制限量を超えてしまうため、複数回に分けて注文する」という方法を検討する方もいます。
しかし、この方法にも注意が必要です。
税関は輸入履歴を名前・住所単位で管理しており、短期間に同一品目を複数回輸入した場合、合算で判断されるケースがあります。
また、意図的な分割輸入は商業目的・転売目的と見なされるリスクもあります。
「1ヶ月ごとに1ヶ月分注文する」という定期購入形式は個人使用として認められやすいですが、これもあくまで自己責任での判断となります。
よくある質問(FAQ)
処方薬の数量上限は何日分ですか?
1ヶ月分(30日分相当)が目安です。
「処方箋医薬品」「毒薬」「劇薬」に分類される薬は、1日あたりの用量から換算して30日分以内が個人輸入の目安とされています。これを超える場合は輸入確認証の取得が必要です。
外用薬(塗り薬・貼り薬)の数量制限は内服薬と違いますか?
はい、違います。外用薬は「1品目24個以内」という独自基準があります 。
外用剤(毒薬・劇薬・処方箋薬・口腔用錠剤・坐薬を除く)は1品目につき標準サイズ24個以内が上限です。
内服薬の「何ヶ月分」とは計算方法が異なるため注意が必要です。
数量が少しだけ超過した場合でも税関に止められますか?
可能性はあります(保証はありません)
税関の検査はリスクベースの抜き取り検査が中心で、全荷物を開封検査するわけではありません。しかし「少しなら大丈夫」という判断はリスクを伴います。数量基準内での注文が原則です。
複数の薬を一度に輸入した場合、合算で数量制限が変わりますか?
いいえ、変わりません。品目ごとに個別に制限が適用されます。
数量制限は1品目ごとに判断されるため、複数品目をまとめて注文しても合算で上限が変わるわけではありません。ただし、輸入総額が一定額を超えると関税・消費税の対象となる場合があります。
輸入確認証を取得すれば数量制限を超えて輸入できますか?
はい、できる場合があります。(正当な理由がある場合に限ります)
継続的な治療や医師の指示がある場合など、正当な理由を地方厚生局に申請し、輸入確認証を取得することで制限数量を超えた輸入が認められる場合があります。
申請先は居住地域によって異なります(関東甲信越・北海道・東北の方は関東信越厚生局、近畿以西の方は近畿厚生局)。
代行業者を使えば数量制限を回避できますか?
いいえ、代行業者を使っても数量制限は変わりません。
代行業者はあくまで輸送・手続きの代行サービスです。
法的に定められた数量制限は、代行業者の利用に関わらず輸入者本人に適用されます。
「代行業者が対応してくれる」という説明を鵜呑みにしないことが重要です。
数量制限を守ることが安全な個人輸入の第一歩
個人輸入における数量制限は、単なるルールではなく、個人の安全と法的リスクを守るための基準です。
- 処方薬・毒薬・劇薬
1ヶ月分以内 - 一般医薬品・医薬部外品
2ヶ月分以内 - 外用薬
1品目24個以内 - 化粧品
1品目24個以内 - コンタクトレンズ(使い捨て)
2ヶ月分以内
制限を超えた場合のリスク(没収・代金不返金・法的問題)を十分に理解した上で、利用は自己責任での判断が求められます。
成分面の注意点については「薬の個人輸入と法律」もあわせてご参照ください。
本記事の情報は筆者の個人的調査・経験と公開資料に基づくものです。個人の感想であり、効果・安全性を保証するものではありません。医師・薬剤師へのご相談を推奨します。最終的な判断はご自身の責任において行ってください。
参考・出典
- 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/topics/tp010401-1.html - 厚生労働省「個人輸入に関するよくある質問(FAQ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/topics/faq.html - 税関「カスタムスアンサーNo.1806(医薬品の個人輸入)」
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/sonota/1806_jr.htm - 関東信越厚生局「医薬品等の個人輸入に関する申請」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/iji/iyakuhin_yunyu.html - Wikipedia「医薬品の個人輸入」
https://ja.wikipedia.org/wiki/医薬品の個人輸入



