本記事は情報提供を目的としており、特定の医薬品・サービスの利用を推奨するものではありません。個人輸入は自己責任となります。健康上の不安がある方は必ず医師・薬剤師にご相談ください。
薬の個人輸入は違法なのか、合法なのか
「海外から薬を取り寄せたいけど、法律的に大丈夫なの?」——この疑問を持つ方は少なくありません。
結論からお伝えすると、自己使用目的・数量制限内・禁止成分なし、という3つの条件をすべて満たせば、薬の個人輸入は合法です。
ただし、これらの条件のうち一つでも外れた場合は違法となり、罰則が科される可能性があります。
個人輸入を規制する法律は複数存在しており、それぞれが異なる視点から輸入行為を制限しています。以下では、主要な法律の内容・個人輸入が認められる条件・禁止成分・違反した場合の罰則について、厚生労働省や税関の公式情報をもとに解説します。
個人輸入を規制する主な法律
薬機法(医薬品医療機器等法)
薬機法は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器などの品質・有効性・安全性を確保するための法律です。個人輸入においては、以下の点が特に重要になります。
- 営利目的の輸入は原則禁止
薬機法では、医薬品を業として製造・販売・輸入する行為には厚生労働大臣の承認が必要です(第14条)。営利目的での輸入は、この承認なしには行えません。 - 自己使用目的は特例として認められる
個人が自分自身で使用するための医薬品輸入については、一定の数量・条件を満たす場合に限り、「輸入確認証」の取得または税関限りの確認で通関が認められています。 - 譲渡・転売は禁止
個人輸入した医薬品を他者に渡したり、フリマアプリ・SNSで販売したりする行為は、薬機法違反となります。「家族のために多めに買う」という行為も、厳密には違法になる可能性があります。
関税法
関税法は、輸入品全般に関わる法律であり、知的財産権を侵害した偽造品・模倣品の輸入を禁じています(第69条の11)。偽造医薬品はこの観点からも輸入禁止対象となります。
また、輸入額が一定基準(個人使用目的の少額免税基準:課税価格の合計が1万円以下)を超える場合は、関税・消費税が発生します。医薬品の場合、関税率は品目によって異なりますが、消費税(10%)は原則として課税されます。
その他の関連法規
薬機法・関税法以外にも、個人輸入に関連する法律は複数あります。
- 麻薬及び向精神薬取締法
麻薬・向精神薬の無許可輸入を禁止 - 覚醒剤取締法
覚醒剤・覚醒剤原料の輸入を厳禁 - 大麻取締法(大麻草の栽培等の規制に関する法律)
大麻の輸入を禁止 - ワシントン条約(CITES)
絶滅危惧種由来の原材料を含む製品の輸入を禁止
これらの法律に違反した場合、薬機法違反よりも重い罰則が科されます。
特に覚醒剤・麻薬関係は数年から十数年の懲役刑が規定されており、「知らなかった」では済まされないケースがほとんどです。
個人輸入が認められる3つの条件
厚生労働省の公式情報をもとにまとめると、個人輸入が認められるためには、以下の3条件をすべて満たす必要があります。
条件① 自己使用目的であること
「海外旅行中に服用していた薬の継続」「国内未承認薬の自己判断による使用」など、あくまで輸入した本人が使用することが前提です。家族への譲渡・他者への販売は認められません。
条件② 数量制限の範囲内であること
厚生労働省が定める数量制限内に収める必要があります(詳細は「薬の個人輸入と数量制限」の記事を参照)。
- 外用剤(毒薬・劇薬・処方箋薬除く)
1品目につき標準サイズ24個以内 - 毒薬・劇薬・処方箋医薬品
用法・用量から換算して1ヶ月分以内 - その他の医薬品・医薬部外品
用法・用量から換算して2ヶ月分以内 - 化粧品
1品目につき標準サイズ24個以内
条件③ 輸入禁止成分・医薬品が含まれていないこと
覚醒剤、大麻、指定薬物など、輸入が絶対禁止されている成分・医薬品が含まれていないことが必須です。
輸入が禁止されている医薬品・成分
以下の成分・医薬品は、個人使用目的であっても輸入が禁止されています。
✅絶対に輸入できないもの
- 覚醒剤(メタンフェタミン等)
- 大麻(CBD製品の一部も含む場合あり)
- ヘロイン(ジアセチルモルヒネ)
- 指定薬物(例:RUSH(ポッパーズ)、5-MeO-MIPT、サルビノリンAなど)
- あへん末
✅条件付きでしか輸入できないもの
- 医療用麻薬・向精神薬
医師の処方箋や地方厚生局の許可が必要 - 処方箋医薬品
1ヶ月分以内、かつ処方箋の携帯が求められる場合がある
なお、厚生労働省は毎年「個人輸入において注意すべき医薬品等」のリストを公表しており、2025年版には複数の禁止薬物成分を含む製品が新たに追加されています。
参照:厚生労働省「個人輸入において注意すべき医薬品等について(2025年)」
違反した場合の罰則
個人輸入に関連する法律に違反した場合、以下の罰則が適用される可能性があります。
- 薬機法違反(無承認医薬品の販売・譲渡)
3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または併科) - 薬機法違反(個人輸入品の転売)
2年以下の懲役または200万円以下の罰金 - 覚醒剤取締法違反
10年以下の懲役(営利目的は最高無期懲役) - 麻薬及び向精神薬取締法違反
7年以下の懲役(種類・態様により異なる) - 大麻草の栽培等の規制に関する法律違反
7年以下の懲役
罰則だけでなく、健康被害が発生した場合も大きなリスクがあります。
個人輸入した医薬品は医薬品副作用被害救済制度の対象外であり、万一の際に公的補償を受けることができません。
参照:政府広報オンライン「健康被害などリスクにご注意!海外からの医薬品の個人輸入」
2025年薬機法改正で個人輸入ルールはどう変わったか
2025年5月14日に薬機法の改正法が国会で成立し、同年11月20日以降、段階的に施行されています。主な改正ポイントは以下の通りです。
- 品質保証責任者の設置義務化
製造販売業者向け - 広告規制の強化
誇大広告・虚偽広告への対応強化 - 調剤業務の外部委託解禁
薬局業務の効率化 - 医薬品の安定供給確保に関する規定の整備
個人輸入に関する基本ルール(自己使用目的・数量制限・禁止成分)に大きな変更はありません。
ただし、未承認医薬品の広告・販売に対する取り締まりが強化されているため、個人輸入代行業者を取り巻く環境は以前より厳しくなっています。利用する際は最新の厚生労働省公式情報を必ず確認してください。
参照:LegalOn「改正薬機法の要点まとめと実務対応」
参照:契約ウォッチ「2025年11月等施行・薬機法等改正とは?」
よくある質問(FAQ)
個人輸入した薬を家族に渡すことはできますか?
いいえ、できません。
薬機法では個人輸入は「自己の個人的使用」が前提です。
家族であっても第三者への譲渡は同法違反となる可能性があります。
家族のために薬を入手したい場合は、医師への相談を通じた正規の処方ルートをご利用ください。
フリマアプリやSNSで個人輸入した薬を販売できますか?
いいえ、できません。
個人輸入した医薬品を他者に販売・譲渡する行為は薬機法違反です。
2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります。
「知らなかった」「少量だから大丈夫」という認識は通用しません。
処方箋なしで処方薬を個人輸入することはできますか?
薬の種類と数量によって異なります。
一般の処方薬であれば、1ヶ月分以内の数量に限り個人輸入が認められるケースがあります。
ただし、重大な健康リスクがある薬(脳機能向上薬・向精神薬など)は数量に関係なく処方箋なしでの輸入は不可です。
判断が難しい場合は地方厚生局にお問い合わせください。
税関で薬が止められた・没収された場合はどうすればよいですか?
原則として没収・廃棄となり、代金は返金されません 。
税関で止められた場合は、税関の指示に従ってください。正当な理由(継続治療など)がある場合は、地方厚生局に輸入確認証の申請を行うことで対応できる場合があります。代行業者への返金請求は、業者の方針次第ですが保証はありません。
個人輸入代行サービスを利用することは合法ですか?
薬の種類・数量・サービス形態によって異なります。
自己使用目的で数量制限内であれば、代行サービスの利用自体が直ちに違法というわけではありません。ただし、未承認医薬品の広告・発送を行っている業者の利用は法的リスクを伴います。また、いかなるトラブルが生じても法的責任は輸入者本人が負うことになります。
2025年の薬機法改正で個人輸入のルールは変わりましたか?
はい、変わりました。(監視・取締りが強化/基本ルールに大きな変更なし)
2025年の薬機法改正では、個人輸入の自己使用・数量制限・禁止成分に関する基本ルールに大きな変更はありません。
ただし、未承認薬の広告規制強化・罰則強化が行われており、代行業者を取り巻く環境は厳しくなっています。
最新情報は厚生労働省の公式サイトで定期的に確認することを強くお勧めします。
薬の個人輸入で守るべき3つのルール
薬の個人輸入は、正しい知識とルールの遵守のもとで行えば違法ではありません。
しかし、条件を一つでも逸脱すれば、法的リスクと健康リスクの両方が生じます。
最終的に守るべきルールを3点に絞るとすれば、以下の通りです。
- 自己使用目的のみ
譲渡・販売は絶対禁止 - 数量制限の遵守
外用剤24個・処方薬1ヶ月分・一般薬2ヶ月分以内 - 禁止成分・医薬品の確認
覚醒剤・大麻・指定薬物は絶対NG
本記事の情報は筆者の個人的調査・経験と公開資料に基づくものです。個人の感想であり、効果・安全性を保証するものではありません。医師・薬剤師へのご相談を推奨します。最終的な判断はご自身の責任において行ってください。
参考・出典
- 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/topics/tp010401-1.html - 厚生労働省「個人輸入に関するよくある質問(FAQ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/topics/faq.html - 厚生労働省「個人輸入において注意すべき医薬品等(2025年)」
https://www.yakubutsu.mhlw.go.jp/individualimport/health_damage/overseas_report/2025.html - 税関「カスタムスアンサーNo.1806(医薬品の個人輸入)」
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/sonota/1806_jr.htm - 政府広報オンライン「健康被害などリスクにご注意!海外からの医薬品の個人輸入」
https://www.gov-online.go.jp/article/201403/entry-10492.html - e-Gov「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145 - LegalOn「改正薬機法の要点まとめと実務対応」
https://www.legalontech.com/jp/media/amend-pmd-act - 契約ウォッチ「2025年11月等施行・薬機法等改正とは?」
https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/2025-yakkihou/



